
今回、帯広競馬場を見学するにあたり
「輓馬」 鳴海 章
と言う本を読みました。
ぼくは「音更図書館」で借りて読みましたが、
文春文庫から出版されているようです。

「輓馬」は、根岸吉太郎監督の映画「雪に願う」の原作。
東京国際映画祭で最優秀作品賞他4部門を獲得。
ずいぶん話題になった映画でしたが。
残念ながら映画はまだ観ていません。
今晩あたり見ましょうか。
著者の鳴海章。
1958年 帯広生まれ。
航空サスペンス小説「ナイト・ダンサー」で
第37回江戸川乱歩賞を受賞しているそうです。
今回初めて読ませていただきました。

矢崎学。事業に失敗し借金取りに追われる。
故郷で輓馬の調教師をする兄を頼ってばんえい競馬の厩舎に逃げ込む。
重い橇を引いて必死に障害を乗り越える輓馬。
その馬を愛し黙々と世話をする厩務員たち。
挫折した男が、健気な馬や人びとの姿に触れ再生へ向かう物語。
と、シンプルな物語ですが。
なかなか良いです。
輓曳競馬のこともよく判ります。

小説を読みながら思い出したことですが。
松岡正剛が「連塾ー日本の方法」で、
ラフカディオ・ハーンについて話していたこと。
新聞記者として念願の日本訪問がかなったものの、
出版社との契約関係がもつれてしまい、
ハーンは友人の紹介で島根県松江の中学校の英語教師をつとめることになります。
この松江との出会いがハーンと日本との出会いを決定的なものにする。
そこでハーンは、日本家屋に住み、妻節子(セツ)を娶り、息子を産み育てる。
その家にセツを頼ってセツの家族や親類が転がり込み、
ひとつ屋根の下に11人が暮らす大所帯となる。
ハーンにとって異国の日本で出会ったこの「家族」がかけがえのないものになる。
ハーンはこのように書き残している。
「わたしは自分の家に11人の世界をもっています。
この人たちにとって私は愛であり、光であり、いのちの糧なのです。
私が幸せそうなときは皆とても幸せそうです。
私が不機嫌なとき、家族は私以上に心を痛めます。
だから、私はいつも正しくあろうとつとめています」。
まさにこれが日本の家であり、日本のコミュニティーやコモンズですね。
と語っている。

矢崎学の兄、調教師の矢崎東洋雄が運営する厩舎の人びとや馬達は、
まさにこの日本的なコミュニティーの中にいる。
日本の「面影」を感じることができました。
秋の一夜を豊かにしてくれる、小説でした。

ばんえい十勝
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